京都の建築家プロ集団(大阪・滋賀・奈良・兵庫)のオープンハウス

建築家プロ集団 イベント報告・オープンハウス

 
< 八瀬の家 >
設計者 カクオ・アーキテクト・オフィス  松村 佳久男
日時 平成18年4月23日  
所在地 京都市左京区上高野東山
 
八瀬の家は叡山電鉄本線の八瀬比叡山口駅より程近く周辺の木々や山並みが見渡せる高台に位置する。その眺望のすばらしさは何物にも変えられない価値を生み出している。心地良さそうに流れる川、春には周辺に桜が咲き、秋には紅葉が辺りを覆う。とても市街地中心では体感できない空間がそこにはあった。

この地域は風致地区という地区に指定されており、外壁の色彩や屋根の形状、軒の出、その他多くの規制があり、デザイナーにとって厳しい場所である。それを全く感じさせないほどの洗練されたデザインには正直驚かされた。ここに至るまでには役所との折衝や検討を何度も繰り替えし行ってきたと予想する。その結果すばらしい住宅がここに生み出されたわけだから、本当に苦労の甲斐があったというものだ。さて構造は地階が鉄筋コンクリート造、1、2階が木造である。南の奥に、洗面と浴室、和室を配した平屋が位置している。この住宅の特長はなんといっても北の景観に向かって大きく切り開らかれた開口部、そして室内には柱の無い大空間。通常の木造では幅約9mあるスパンは飛ばせない。鉄骨造のような空間だがここはSE工法という巨大な木の集成材を使用した工法だ。ジョイント部分には専用の金物を使用し固定している。これからさらに目を向けられる工法である。

エントランスは1階からだが外構がまだ完成していなかったため地階のガレージから入らせていただいた。ガレージの横には上階に上がる階段室があり、その脇には書斎コーナーが設けられている。書斎コーナーからガレージ内を見渡せる大きなFIXガラスが設けられ愛車をゆっくりと眺めていられるスペースとなっている。ガレージシャッターを開放するとさらに多くの光がガレージから書斎へ入りこみ明るい空間創りにも一役買っているFIXガラスであった。そして1階にLDK、水廻り、和室、2階に寝室という間取り。南に位置する和室とリビングの間に坪庭的空間を設けてあり、そこには砂利の上に水を張って照明で演出するという工夫が凝らされる。そしてこの開放感溢れるリビングを核として各々のエリアへ繋がっていく。とにかく明るくハイクオリティーの気持ちの良い住宅だ。写真とこの乱雑な文章ではお伝えしきれないところが、なんとも悔やまれる。オープンハウスに来ていただいた方々に喜んで帰っていただいたことが何よりだった。機会があればまたお伺いしたい住宅だ。